京都大学大学院工学研究科 分子工学専攻 触媒反応化学 寺村研究室

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研究内容

『触媒』とは化学平衡を変えず,化学反応を加速させる物質を指します。適切な触媒を用いることにより,通常では得られない物質を合成することや,分解できない物質を分解することが可能です。そのため,現代社会のあらゆる場で触媒は活躍しています。工業プロセスの大部分は触媒化学に立脚しており,有機工業化学はもとより,我々の生活を身近に支えているファインケミカルズ合成や排気ガスの浄化にも触媒が欠かせません。

現代社会にとって有用な触媒の開発には触媒作用の分子論的理解に基づいた分子レベル・ナノレベルでの触媒設計が必須です。本研究室では,この考えに則り,環境負荷低減・循環型社会を目指した次世代の触媒化学システムの構築を行っています。

2023年度京都大学オープンキャンパスで公開された研究紹介ビデオは こちら 

研究室で保有している装置等の紹介は こちら

プレスリリース(2021年3月11日)
プレスリリース(2020年10月14日)
プレスリリース(2017年7月7日)

 

本研究室の研究方針
『基礎物性の理解なくして応用研究なし』

ナノレベルデザインに基づく環境負荷低減を目指した触媒化学システムの構築

金属酸化物−金属酸化物界面の物性や触媒作用を物理化学的にナノレベルで解明すること,ならびに,それを触媒化学システムの設計にフィードバックして高効率な反応系を開発することを基本方針としています。酸塩基触媒・エネルギー及び環境触媒・光触媒が第2のキイワードです。研究テーマは大きく分けて,「環境負荷低減を目指した新規触媒反応系のデザイン」および「高分散担持金属酸化物(複合酸化物)や金属ナノ粒子を代表とする触媒材料のナノレベルでの物性研究および設計」の2点からなります。

金属酸化物光触媒の基礎的性質の研究は着実に進んでおり,当研究室では基礎的な触媒反応ばかりではなく実用的にも有用な触媒反応系を駆使して,励起・電荷分離・吸着分子との反応のメカニズムを探っています。中でも,当研究室で開発された担持型の光触媒(次世代光触媒)は電荷分離寿命が数ミリ秒の長さがあり,次世代の光触媒材料として期待されています。様々な分光学的手法や反応速度論を駆使することで,触媒表面で進行している反応をリアルタイムに追跡し(その場観察),触媒作用を分子レベルで解明しています。さらに,ここで得られた結果を触媒のデザインにフィードバックすることで高機能な触媒系の構築を進めています。また,固体表面を精密に設計することにより,酸点・塩基点のように相反する性質を持つ活性サイトを近傍に配置することや,親水性・疎水性など異なる特性を同一表面に付加することが可能となります。このような固体表面の精密設計による高機能な触媒・光触媒の合成を目指しています。

現在の研究テーマは,

  1. 二酸化炭素の還元(人工光合成) 
    実際にCO2が一酸化炭素(CO)へ還元される様子はこちら(YouTube) → その1 その2
  2. 低温アンモニア脱硝(deNOx)
  3. 自動車排ガス処理触媒を指向した新規触媒材料の開発
  4. 炭化水素の高難度選択光酸化
  5. 固体表面における酸塩基性の発現とその支配因子の解明
  6. 天然ガスからの水素製造

などが主体となっています。特に (1) や (2) では,吸着二酸化炭素やアンモニアなどの分子自体が禁制バンド内にアクセプターおよびドナー準位を形成するという半導体光触媒とは異なった新しいメカニズムを扱っています。(3) では炭化水素やNOxなどの有害物質の除去を目的とした触媒開発を行っており,貴金属や希少元素を用いない新規触媒材料の創製を目指しています。また, (4) では高機能な可視光応答型光触媒を用いて分子状酸素の光活性化を行っており,グリーンケミストリー的視野に立った付加価値のあるファインケミカルズ合成反応系の構築を目指しています。

さらに,それぞれの触媒反応に対する反応機構や触媒活性種をSPring-8等の大型放射光施設において測定可能なX線吸収スペクトル(XAFS)を中心とした様々なスペクトロスコピー(分光学的手法)により解明し,触媒反応の実像に迫っています。