ヘテロナノグラフェン

コロールを基盤とした新奇電子系の開拓

コロールは環縮小ポルフィリノイドの1つであり、台形型の分子構造と金属イオンを取り込むことができる内部空孔を有しています。ポルフィリンとは異なり形式的に三価の配位子として働くことから、高酸化数の金属錯体として触媒利用などの研究が盛んにおこなわれてきました。 一方で我々は、コロールの高い反応性を利用して、新しいコロール誘導体の合成とその新奇電子状態の解明をおこなっています。
2015年に報告した、メゾ無置換コロールの合成は、その第一歩でした。
これまでは置換基による修飾が必須だったコロールですが、メゾ無置換コロールを起点として多量化したコロールテープの合成や、反芳香族性を有するメゾ酸素化イソコロールの合成を達成しました。

コロールテープの合成と金属錯化

メゾ無置換コロールを酸化することでメゾメゾ結合コロール二量体が得られ、さらにその二量体を高希釈条件下で強い酸化条件に付すことで三重に繋がったコロール二量体(コロールテープ)が得られました。 コロールテープは、内部NHの数が2NH型になっており、ポルフィリンテープとは異なる性質を有します。また、通常のコロールと違って、Zn(II)やCu(II)などの二価の金属イオンを取り込むことができます。
そこにGa(III)を入れようとすると、コロールが一電子還元されてラジカルになり、ガリウムがヒドロキシ基で架橋された対面型二量体が得られました。この化合物は、珍しい対面型のシングレットジラジカル分子であることがわかりました。
また、コロールテープの合成において、安定な2NHコロールラジカル二量体が中間体であることもわかり、ポルフィリンの化学とは異なる側面が見出されています。