二重らせんはDNAなどにみられるように生体機能を実現する重要な骨格です。しかし、人工的にこのような構造を構築して機能性分子として扱うのは難しく、これまではペプチド結合を用いたいわゆるDNA模倣型の研究が主流でした。
近年我々は、トリピリンと呼ばれる共役ピロール三量体構造の末端にアニリンを置換すると、水素結合による自発的二量化によって二重らせん状の構造体が得られることを発見しました。
また、末端に導入するアニリン上の置換基を変えることで二量化の会合定数が変化することも明らかにしました。
このジアミノトリピリン類は近赤外領域の光を吸収する青色色素としての性質を有するため、機能性二重らせん化合物としての応用が期待されます。
共役二重らせん化合物ジアミノトリピリン
一重らせんと二重らせんの共結晶
末端に導入するアニリンの代わりにベンジルアミンを導入すると、二量化の会合定数が40分の1ほどに小さくなることがわかりました。
その状態から得られた単結晶を解析すると、珍しい一重らせん体と二重らせん体の共結晶が確認されました。
動的平衡状態でこのような共結晶を確認した例は珍しく、我々の詳細な構造同定アプローチが新たな発見に繋がったと言えます。
置換基効果による構造変化
メゾ位の置換基に電子供与性および求引性の置換基を導入しても二量化の会合定数はそれほど大きく変わらない一方で、ペンタフルオロフェニル基を導入した場合には会合定数が小さくなることがわかりました。
また、単結晶X線構造解析から、二重らせんの組み合い方が異なった、緩い会合状態が確認されました。水素結合ネットワークを組み替えたり、会合状態が緩んだり、置換基の影響が敏感に影響する化合物であることがわかっています。